法人の確定申告 Q&A
お答えします
決められるのは、事業年度が始まってから3か月以内です。ここで決めた額を毎月同じ金額で払い続ける形を、定期同額給与といいます。途中で変えること自体はできます。ただし、変えたあとも経費(損金)として認められるのは、役員の地位や職務が大きく変わったときと、経営の状況が著しく悪化したときの二つに限られます。それ以外の理由で増やすと、増やした分が経費になりません。
本記事には広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。リンク経由でサービスを利用された場合、当サイトに紹介料が支払われることがありますが、ユーザーが追加費用を負担することはありません。
一解説
役員に払う給与の額は、定款にその定めがないときは、株主総会の決議で決めます(会社法361条1項)。多くの会社は定款に額を書かず、事業年度が終わったあとの定時株主総会で決議しています。株主総会で総額の限度だけを決めて、一人ひとりの額は取締役会で決める形もあります。会社法などの規定に従って決議しているのであれば、国税庁は株主総会での決議と同じように扱ってよいとしています。
税法の側にも、別の期限があります。法人が役員に払う給与は、決まった形で払わないと、法人税の計算で経費(損金)になりません(法人税法34条1項)。認められる形は三つあり、定期同額給与・事前確定届出給与・一定の業績連動給与といいます。毎月の給与として使うのは定期同額給与です。その額を決められるのは、原則として、事業年度が始まる日の属する会計期間の開始日から3か月を経過する日までです。税法ではこの日を「3月経過日等」と呼びます。3月決算の会社なら6月末、12月決算の会社なら3月末にあたります。確定申告書の提出期限を延ばす特例について税務署長の指定を受けている会社は、この3か月が、指定された月数に2を加えた月数に変わります。1か月の延長を受けている場合は3か月のままです。
定期同額給与とは、支給時期が1か月以下の一定の期間ごとで、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものをいいます。額面が同額でなくてもかまいません。支給額から源泉徴収した所得税などを差し引いたあとの金額が同額であるときも、この条件を満たします。
3月経過日等までに額を改定したときは、期間を二つに区切って判定します。事業年度の初日から改定後の最初の支給日の前日までと、改定前の最後の支給日の翌日から事業年度の終わりまでです。それぞれの期間の中で各支給時期の額が同額であれば、どちらも定期同額給与になります。年度の初めの数か月は前の期と同じ額、そこから先は新しい額、という払い方で差し支えないということです。
3月経過日等を過ぎたあとの改定で、定期同額給与として認められるものは二つあります。
一つ目は臨時改定事由による改定です。その事業年度に、その役員の職制上の地位が変わったこと、職務の内容が重大に変わったこと、その他これらに類するやむを得ない事情があった場合をいいます。国税庁の質疑応答事例には、代表取締役が急逝したため臨時株主総会で取締役を代表取締役に選び、あわせてその役員の給与を前任者と同じ額まで増やした例が載っています。この場合は、増額の前と後のそれぞれが定期同額給与として扱われます。
二つ目は業績悪化改定事由による改定です。経営の状況が著しく悪化したこと、その他これに類する理由による改定で、こちらは減額に限られます。国税庁は、この理由の範囲を次のように示しています。財務諸表の数値が相当程度悪化したことや、倒産の危機に瀕したことがこれに当たります。さらに、経営状況の悪化に伴って、株主・債権者・取引先といった第三者との関係上、役員給与を減らさざるを得ない事情が生じている場合も含まれます。挙げられている例は三つです。株主との関係で、経営上の責任から減額せざるを得ない場合。取引銀行と借入金の返済計画を組み直す協議(リスケジュール)のなかで、減額せざるを得ない場合。取引先などの利害関係者からの信用を維持・確保する必要から経営改善の計画を作り、そこに減額が盛り込まれた場合です。
一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったことは、この理由に含まれません。利益を調整することだけを目的とした減額も同じです。
二つの事由のどちらにも当たらない改定を期の途中で行うと、そこから先の支給額は定期同額給与の形から外れます。国税庁の質疑応答事例は、増額したときの計算を示しています。増額したあとの各支給時期の額が同額であるときは、増額前の額に増額分を上乗せして払ったものとみることができます。その場合、増額前の額に相当する部分は、引き続き定期同額給与として払われているものとして扱われます。経費にならないのは、上乗せして払った部分の金額です。
額を動かしたときは、いつ、いくらに決めたのかが残っていないと、期間の区切り方そのものを示せません。株主総会または取締役会の議事録に、決議の日付と改定後の額を残しておくことになります。
二一次情報
法人税法 第34条(役員給与の損金不算入)(抜粋)
第三十四条 内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与で業績連動給与に該当しないもの、使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務に対するもの及び第三項の規定の適用があるものを除く。以下この項において同じ。)のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
一 その支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与(次号イにおいて「定期給与」という。)で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与(同号において「定期同額給与」という。)
二 その役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭又は確定した数の株式(出資を含む。以下この項及び第五項において同じ。)若しくは新株予約権若しくは確定した額の金銭債権に係る第五十四条第一項に規定する特定譲渡制限付株式若しくは第五十四条の二第一項に規定する特定新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与で、定期同額給与及び業績連動給与のいずれにも該当しないもの
三 内国法人(同族会社にあつては、同族会社以外の法人との間に当該法人による完全支配関係があるものに限る。)がその業務執行役員に対して支給する業績連動給与
2 内国法人がその役員に対して支給する給与(前項又は次項の規定の適用があるものを除く。)の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
3 内国法人が、事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることによりその役員に対して支給する給与の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
4 前三項に規定する給与には、債務の免除による利益その他の経済的な利益を含むものとする。
会社法 第361条第1項(取締役の報酬等)(抜粋)
第三百六十一条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
六 報酬等のうち金銭でないもの(当該株式会社の募集株式及び募集新株予約権を除く。)については、その具体的な内容
国税庁 タックスアンサー No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)(抜粋)
法人が役員に対して支給する給与(注)の額のうち次に掲げる定期同額給与、事前確定届出給与または一定の業績連動給与のいずれにも該当しないものの額は損金の額に算入されません。
定期同額給与
定期同額給与とは、次に掲げる給与です。
1 その支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与(以下「定期給与」といいます。)で、その事業年度の各支給時期における支給額または支給額から源泉税等の額(注)を控除した金額が同額であるもの
2 定期給与の額につき、次に掲げる改定(以下「給与改定」といいます。)がされた場合におけるその事業年度開始の日または給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日またはその事業年度終了の日までの間の各支給時期における支給額または支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額であるもの
(1) その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月(確定申告書の提出期限の特例に係る税務署長の指定を受けた場合にはその指定に係る月数に2を加えた月数)を経過する日(以下「3月経過日等」といいます。)まで(継続して毎年所定の時期にされる定期給与の額の改定で、その改訂が3月経過日等後にされることについて特別の事情があると認められる場合にはその改訂の時期まで)にされる定期給与の額の改定
(2) その事業年度においてその法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情(以下「臨時改定事由」といいます。)によりされたこれらの役員に係る定期給与の額の改定(上記(1)に掲げる改定を除きます。)
(3) その事業年度においてその法人の経営状況が著しく悪化したことその他これに類する理由(注)(以下「業績悪化改定事由」といいます。)によりされた定期給与の額の改定(その定期給与の額を減額した改定に限られ、上記(1)および(2)に掲げる改定を除きます。)
(注) 法人の一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれません。
事前確定届出給与
1 その給与が次のいずれにも該当しない場合 事前確定届出給与に関する届出をしていること。
(1) 定期給与を支給しない役員に対して同族会社に該当しない法人が支給する金銭による給与
(2) 株式または新株予約権による給与で、将来の役務の提供に係る一定のもの
(注1) (1)または(2)に該当する給与については、事前確定届出給与に関する届出は必要ありません。
事前確定届出給与に関する届出期限
事前確定届出給与に関する定めをした場合は、原則として、次の(1)または(2)のうちいずれか早い日(新設法人がその役員のその設立の時に開始する職務についてその定めをした場合にはその設立の日以後2か月を経過する日)までに所定の届出書を提出する必要があります。
(1) 株主総会等の決議によりその定めをした場合におけるその決議をした日(その決議をした日が職務の執行を開始する日後である場合にはその開始する日)から1か月を経過する日
(2) その会計期間開始の日から4か月(確定申告書の提出期限の延長の特例に係る税務署長の指定を受けている法人のうち、一定の通算法人については5か月、それ以外の法人についてはその指定に係る月数に3を加えた月数)を経過する日
国税庁 質疑応答事例(法人税)「定期給与の額を改定した場合の損金不算入額(定期同額給与)」(抜粋)
【照会要旨】
当社(年1回3月決算)は、X年5月25日に開催した定時株主総会において、前年から引き続き取締役甲に対し毎月20日に月額50万円の役員給与を支給することを決議していますが、甲の統括する営業部門の業績が好調であることから、X+1年2月10日に臨時株主総会を開催し、同月分の給与から月額20万円ずつ増額して支給することを決議しました。
X+1年2月の増額改定は、臨時改定事由による改定に該当しない改定ですが、事業年度開始の日から定時株主総会による給与改定の前までの定期給与(4月及び5月の給与)、定時株主総会による給与改定後から事業年度終了の日までの定期給与(6月から翌年3月までの給与)について、それぞれ定期同額給与に該当しますか。また、定期同額給与に該当しない場合、損金不算入額の算定はどのように行えばよいですか。
【回答要旨】
取締役甲に支給する4月及び5月の給与は定期同額給与に該当します。また、6月以降の給与について、増額改定後の期間(翌年2月及び3月の2か月間)においては増額改定前の支給額である50万円に20万円を上乗せして支給することとしたものであるともみることができることから、その増額改定前の定期給与の額(50万円)に相当する部分が引き続き定期同額給与として支給されているものと考えられます。したがって、損金不算入額は、増額改定後の定期給与の額のうち増額改定前の支給額に上乗せして支給した部分の金額40万円(20万円×翌年2月及び3月の2か月分)となります。
(注) 本照会は、役員給与の額を株主総会で決議することとしていますが、例えば、株主総会で役員給与の支給限度額を定め、各人別の支給額は取締役会で決議するなど、会社法等の法令の規定に従って役員給与の額を決議するものは、この事例における株主総会での決議と同様に取り扱って差し支えありません。
国税庁 質疑応答事例(法人税)「役員の分掌変更に伴う増額改定(定期同額給与)」(抜粋)
【照会要旨】
当社(年1回3月決算)では、代表取締役Aが急逝したことから、急きょ、10月1日に臨時株主総会を開催し、取締役Bを代表取締役に選任するとともに、Bの役員給与を月額50万円から前任者Aと同額の月額100万円に増額改定する旨の決議を行いました。この場合、当社がBに支給する役員給与は法人税法第34条第1項第1号《役員給与の損金不算入》に規定する定期同額給与に該当しないこととなるのでしょうか。
【回答要旨】
ご質問の場合は、増額改定前の定期給与と増額改定後の定期給与とのそれぞれが、定期同額給与として取り扱われます。
(理由)
ご質問の場合は、代表者の急逝に伴う役員Bの職制上の地位の変更により、事業年度の中途に行った当該役員Bに係る定期給与の額の改定であることから上記の臨時改定事由によりされた対象となる役員に係る定期給与の額の改定に該当します。
したがって、当該事業年度開始の日から改定後の最初の支給時期の前日までの間の各支給時期における役員Bに係る定期給与の額が同額(50万円)であり、かつ、改定前の最後の支給時期の翌日から当該事業年度終了の日までの間の各支給時期における役員Bに係る定期給与の額が同額(100万円)であれば、増額改定前の定期給与と増額改定後の定期給与とのそれぞれが、定期同額給与に該当することになります。
国税庁 役員給与に関するQ&A(平成20年12月・平成24年4月改訂) Q1 業績等の悪化により役員給与の額を減額する場合の取扱い(抜粋)
⑶ ところで、業績悪化改定事由については、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」と規定されていることから、経営状況が相当程度悪化しているような場合でなければこれに該当せず、対象となる事例は限定されているのではないかといった疑問もあるところです。
これについては、法人税基本通達9-2-13のとおり、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいいますので、財務諸表の数値が相当程度悪化したことや倒産の危機に瀕したことだけではなく、経営状況の悪化に伴い、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じていれば、これも含まれることになります。
このため、例えば、次のような場合の減額改定は、通常、業績悪化改定事由による改定に該当することになると考えられます。
① 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合
② 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
③ 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合
利益調整のみを目的として減額改定を行う場合には、やむを得ず役員給与の額を減額したとはいえないことから、業績悪化改定事由に該当しないことは言うまでもありません。
※引用は原文のままです。読みやすさのため改行位置を調整し、一部を抜粋している箇所があります(編集・加工を行った部分)。最新の内容は必ず出典元のページでご確認ください。
三法人の場合
会社の経費の多くは、使った事実があとから積み上がっていきます。役員報酬は、先に額を決めてから払います。事業年度が始まって3か月のあいだに額を決め、そこから一年、同じ額を払い続けたものが経費になります。決算の数字が見えてきてから今期の役員報酬を動かして利益を調整することは、法人税法34条1項によってできません。
社長ひとりの会社でも、手順は変わりません。株主も取締役も本人ですが、額を決めるのは株主総会の決議で、決めた日と額の記録が要ります。前の期と同じ額を払い続けている場合は、額を据え置くことをあらためて決議していなくても、各支給時期の額が同額である以上は定期同額給与にあたります。額を変えるつもりでいて3月経過日等を過ぎてしまうと、その事業年度の役員報酬はもう変えられません。
※実際の取扱いは業態・契約・実態により異なります。個別の判断は税理士または所轄税務署にご確認ください。
四相談先
ここまでの線引きは、実際の契約や業務の実態によって結論が変わります。判断がつかない支出がある、金額が大きい、過去分もさかのぼって直したいといった場合は、早めに専門家に確認したほうが結果的に安く済みます。依頼先の探し方は大きく 2 通りあります。

推奨
運営:弁護士ドットコム株式会社(東証プライム上場)
税理士ドットコム
全国 6,800 名以上の税理士から無料で紹介を受けられる、東証プライム上場企業運営の税理士マッチングサイト。料金や得意分野で比較可能。
こんな方に:決算・申告を任せられる顧問税理士を探している法人の方
ご自身の場合にどうなるか、判断に迷ったときは。
税理士に相談する →